看護師の職場選び 病院の何科で働く?

消化器内科

病棟の特徴、利用者・患者の特性とは?

口から食べた食べ物は体内で消化・吸収されて、最終的には排泄されますが、この時に関わる臓器は消化器官と呼ばれています。

消化器内科では食道、胃、小腸、大腸、肝臓、膵臓などの疾患を内科的に治療するのですが、他科に比べるとかなり広範囲に渡るところが大きな特徴です。

また疾患としては潰瘍や癌、緊急を要する消化管出血や胆管炎、慢性的に経過する慢性肝炎や肝硬変など病態や重症度も多種多様です。

同じ疾患でも人によっては症状が乏しかったり、典型的ではないなど個人差も多く見られます。

このように多くの疾患が存在するため、それに対する治療法の数も必然的に多くなります。

消化器内科では血液やX線、CT、MRI、超音波検査などの一般的な検査の他に、内視鏡検査やバリウムによる透視検査なども多く行われています。

このような検査の延長線上でポリープ切除や、粘膜切除術など医療技術の進歩によって高度な治療も増えてきており、外科的手術と比較すると患者への負担はかなり軽減されるようになりました。

特に日本人の死因の第1位となっているのは癌ですが、胃癌、大腸癌、肝臓癌、膵臓癌などの消化器系の癌は上位を占めています。

初期では自覚症状がないことが多く、健診などで発見されるケースがほとんどです。

膵臓癌では発見された時にはかなり進行している場合もありますが、胃癌などは早期発見・早期治療によって治癒できるようになりました。

以前は開腹手術をしていたような癌も、最近では内科的な治療によって根治することも可能となっていますし、肝臓癌の場合でも、肝動脈の造影を行いながらピンポイントで癌部分に抗がん剤を注入したり、血管の塞栓術をするなども行われています。

また抗がん剤治療や放射線治療などとの併用によりさらに生存率が高くなることも確認されています。

しかし一方で外科的手術の適応とならないような進行癌では、終末期として最後を迎える患者さんも多くなるため、疼痛コントロールなどの緩和医療も行われます。

消化器内科では腹痛や嘔気による食欲不振が多いことに加え、検査や治療のために絶飲食をして点滴をすることが多くなります。

末梢静脈からの点滴だけではなく、中心静脈から高カロリー輸液も多く行われていますし、クローン病などの腸疾患では経腸栄養による治療も必要となります。

従ってその期間が長ければ長くなるほど、患者さんは食事に対するストレスが増強する傾向があります。

胃潰瘍などは退院後にも再発する可能性があるため、生活習慣の改善などの自己管理能力が予防へのカギとなります。

 

ナースの役割とは?

消化器内科病棟での看護師の役割は大きく分けると3つあります。

①医師の診療補助

消化器内科では病気が解放に向かうための治療が滞りなく行われなくてはなりません。

内視鏡下で行われるもの、レントゲンの透視下で行われるものなど種類が多く、スムーズに治療が行われるためには、これらの使用物品の準備や手順については十分に熟知しておく必要があります。

また点滴からは抗がん剤による化学治療を含めた薬物治療も行われるため、薬の効果や副作用の症状などを観察して医師に報告しなければなりません。

通常は治療前に、患者さんとその家族に対して医師から十分な説明がありますが、理解が不十分な場合もあります。

そのような時には相手の理解度に合わせた説明をし、不安なく治療が受けられるようにすることも看護師の役目です。

②食事・排泄のケア

消化器内科では腹痛や嘔気などで食事摂取が困難となることが多く、点滴によって栄養を補うことになります。

決められた量を時間通りに注入したり、点滴ラインの捻じれや屈曲などによって注入が妨げられないように常に注意を怠らないようにします。

ほとんどの人は口から食事を摂ることを楽しみにしており、食に対する欲求を持っています。

しかし食事を制限されてしまえば、その欲求はさらに高くなりストレスが増強するのは当然です。

少しでもその欲求が満たされるように、医師や栄養士と相談の上に食事形態を変えたり、口当たりの良いものなどの工夫を考えていく必要があります。

また胃腸系の疾患によっては便秘や下痢といった症状を繰り返す患者さんも多くいるため、苦痛を取り除くための処置やケアはとても大事です。

治癒後も食生活の影響により病気を繰り返す患者さんも多いため、食事指導も必要となります。

③精神的ケア

入院中の患者さんは病気に対する不安を常に抱えていますが、消化器系疾患ではさらに食事を食べたいのに食べれないことによるストレスや、抗がん剤治療中の副作用による苦痛なども加わります。

人によっては心療内科の受診が必要だったり、家族の面会によって軽快したり原因となる要素は様々です。

そのため看護師はそれぞれの患者さんが抱える悩みや不安を読み取り、少しでも早く解消できるように医療チームの橋渡し的な役割でケアにあたる必要があります。

また家族からも相談を持ちかけられることがあります。

特に高齢の家族は退院後の生活にとても不安が強く、今後の方向性を考えられない場合があります。

看護師としてアドバイスすることもありますが、必要に応じて専門的な部門に紹介することもあります。

 

消化器内科病棟の日常業務について

病院の方針によって看護体制にも違いはありますが、だいたいチームナーシングやプライマリーナーシングの組み合わせに、人員に余裕があれば機能別で動く人がいるという体制になっています。
日勤業務の大まかな流れです。

・申し送りの前に、その日の受け持ち患者さんのカルテを見たり本日の予定などをチェックします。
・夜勤者から申し送りを受けます。
・検温をします。
・ケアや処置、点滴などをします。
・経管栄養や食事介助を行います。
・検査や治療などに患者さんを移送します。
・検査や治療の介助に入ります。
・医師の指示受けをします。
・カルテに記録をします。
・夜勤者に申し送ります。

担当している患者さんの看護に関して責任を持って全て自分がやることもありますが、実際は清拭や入浴などのケアや処置は一人で困難であったり、患者さんが安楽でない場合が多々あります。

そのような場合はチームメンバーや看護助手と協力して効率的に行うことも大切です。

朝の申し送りの後や時間のある時に、チーム間でカンファレンスを行いお互いの情報や方針などを共有し合うようにします。

問題点などがあれば医師や他の関連スタッフに相談し、できるだけ早く解決できるように働きかけなければなりません。

例えば褥瘡が大きくなってしまったり、なかなか治癒しない場合などは皮膚科や形成外科へコンサルタントをしたり、管理栄養士にも相談して栄養補助食品を追加するなどです。

あるいは点滴内容の変更を担当の医師に相談したり、理学療法士に座位姿勢や移乗方法を指導してもらうなど多面的に検討していきます。

このように自分の担当患者さんの方針が変更した場合には、看護計画も変更しチーム内で一貫した看護が行われるようにします。

もちろんチーム内の他のメンバーが立てた看護計画にも十分に目を通し、自分自身も同じ看護方法で行わなければなりません。

消化器内科では、あらかじめ予定されている検査や治療のほかに、患者さんの状態によっては緊急で胃や大腸内視鏡検査やイレウスチューブの挿入などが行われます。

短期入院でのポリープ切除や肝生検も行われるため、入退院も頻繁になる日もあります。

ですから優先順位を考えて、チームメンバー間で協力し合ってお互いの業務がスムーズに遂行できるよう、臨機応変にその日のケアを変更するなどの柔軟性が求められます。

 

消化器内病棟の夜勤業務について

夜勤人数や病床数などによって夜勤の業務内容は様々ですが、大まかな流れを説明します。

・日勤者からの申し送りを受けます。
・食事介助、経管栄養の注入を行います。
・内服の確認をします。
・口腔ケアや排泄介助など身の回りのケアを行います。
・検温をします。
・点滴管理、時間薬の注入を行います。
・ドレーンの排液量や尿量のチェックを行います。
・カルテに記録します。
・次の勤務者へ申し送りをします。

消化器内科では病気の症状によって、あるいは検査や治療のために絶食していることが多く、食事への欲求など精神的ストレスを抱えています。

また疾患やその治療に対する不安もあり、特に夜間は就寝時間から起床時間まで長いためにいろいろと思い悩んで不眠を訴える患者さんも少なくありません。

業務に追われ忙しい夜勤ですが、一人ひとりの患者さんとの短い会話からでも、それぞれの不安や悩みを察知することは可能です。

何気ない一言も見逃さず、次のケアに活かせるような対話が大切です。

さらに点滴やドレーンなどのチューブ類も眠りを妨げる大きな原因となります。

そのため夜間の巡視の際には、点滴の滴下やラインの捻じれ・屈曲などの確認はもちろんのこと、点滴などによって苦痛な体位を強いられていないかどうかにも気を配る必要があります。

例えば点滴ラインが短いなど、もし原因が明らかであれば延長チューブを追加して長くするなどで対処できます。

点滴によって排尿が頻回になる場合もありますが、中には遠慮をして我慢している患者さんもいるので、こちらから声をかけるようにします。

 

胃癌や大腸癌などの疾患が多いために、夜間に急変することも珍しくありません。

吐血や下血で内視鏡下での止血や輸血が必要となったり、救急蘇生が必要であったり、患者さんが亡くなられて死後処置をしなければならないなど様々なことが起こります。

そのような場面に遭遇した時には気が動転しがちですが、最も必要となるのは冷静な判断力です。

他の夜勤ナースと協力して業務分担をし、他の患者さんの看護も怠らないようにしなければなりません。

夜勤中はどんな場面でもスムーズな対応ができるようにしておく必要がありますから、普段から必要物品や連絡部署の確認などをしておくことは大切です。

 

求められる知識とスキルとは?

疾患の病態を理解したり症状の出現などを予測するためには、基本となる消化器系の解剖生理の知識があることが大前提となります。

しかし消化器内科では他科と比べて、対象となる臓器がとても多いのが特徴です。

そのため広範囲に渡る知識が必要となります。

昨今の医療技術の目覚ましい進歩により、内視鏡下やエコー下で行われる検査や治療も格段に増えています。

・早期食道癌や胃癌、大腸ポリープ・腫瘍に対する内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)、内視鏡的粘膜切除術(EMR)
・食道静脈瘤に対する内視鏡治療(EVL、EIS)
・食道拡張術
・出血性胃・十二指腸潰瘍に対する内視鏡的止血術
・肝生検
・超音波造影検査
・肝細胞癌に対するラジオ波焼灼術(RFA)、エタノール注入療法(PEIT)、肝動脈塞栓術(TAE)
・超音波内視鏡検査 (EUS)
・総胆管結石に対する内視鏡的乳頭切開術 (EST)、乳頭拡張術 (EPBD)
・胆道系悪性腫瘍に対する内視鏡的ステント挿入
・閉塞性黄疸に対する経皮経肝的胆道ドレナージ(PTCD)、ステント挿入
・急性胆嚢炎に対する経皮経肝的胆嚢ドレナージ(PTGBD)、内視鏡的胆嚢ドレナージ(ENGBD)
・慢性肝炎・肝硬変に対するインターフェロン治療

看護師はこれらの検査や治療を行う際に補助として関わらなければならないため、目的や方法、必要物品、観察項目、また使用される最新の医療機器に関しても十分に理解している必要があります。

また胃癌、食道癌、大腸癌などの進行性の癌に対して行われる化学療法では、使用される薬剤に関して幅広い知識が必要となりますし、使用中の患者さんに変化があった場合に迅速に対応できるかどうかも大切なポイントです。

消化器内科の疾患のほとんどは、食生活を含む生活習慣と深く関わっているため、治療後も再発しないように予防に努めなければなりません。

そのため看護師は予防医学の観点から指導に携わっていく必要があります。

いくら知識が豊富でも患者さんが理解できなければ何の意味もありません。

看護師には患者さんの理解度に合わせて、分かりやすい言葉で伝えられるかどうかのコミュニケーションスキルも問われることになります。

消化器内科では癌患者が多いため、抗がん剤治療に使われる薬剤の効果や副作用などに関する知識の他に、ターミナル期にある患者さんに寄り添った看護スキルも必要となります。

分からないことや疑問に思ったことはそのままにせず、自分で調べたり先輩に聞くなどして意識的に知識を増やしていく姿勢は看護師として大切なことです。

 

消化器内科と他職種・コメディカルとの関わりは?

病院で病気の治療をするということは、医師だけでできるものではありません。

医師の補助として働く看護師を始めとして、同じ目標に向かってそれぞれの職種がそれぞれの専門性を存分に発揮させることで高度なチーム医療が成り立っているのです。

そのためには自分以外の職種の専門性をよく理解し、円滑な関係性を築いていくことがより重要となります。

消化器内科で関わる主な職種について説明します。

・薬剤師

内服薬や点滴用の薬剤の取り扱いを担っている他に、ベッドサイドで患者さんへの薬の説明などを行ったりもします。
薬によっては特殊な服用方法や食べてはいけない食物もあるので、より具体的な説明は医師よりも薬剤師の方が適しています。
また患者さんのニーズに合わせて、薬を一包化したり粉砕して飲みやすくするなどもできるので、看護師は必要な患者情報を適宜発信する役目があります。

・放射線科医師や技師

放射線科の医師は主にCTやレントゲンなどの画像診断を行いますが、癌に対する放射線療法では照射量や的確な照射部位を決定したりしています。
消化器内科では進行性の癌疾患が多いことから、放射線療法や定期的な画像検査において関わりの多い部署です。

・検査技師

内視鏡下や透視下での検査や治療が多いため、スムーズに遂行できるように技師との連携が必要となります。

・栄養士

胃腸症状により食べられない、あるいは治療の必要があり食べられないなど消化器内科では他科よりも食事に関する問題が主流となっています。
栄養士は栄養サポートチームの中心として患者さんの栄養状態などの評価を行っているため、看護師からの情報により食事内容や食事形態の調節をしていきます。
また様々な栄養補助食品があるため、患者さんの状態に合ったものを医師に提案し取り入れていくことも必要となります。

・リハビリ科

特に高齢者では入院生活の長期化によって、全身の筋力低下がみられます。
せっかく病気が治癒しても、ADLの低下により退院できなくなるなどの問題が生じるため、日々のリハビリは大変重要です。

・麻酔科

癌疾患による疼痛を訴える患者さんも少なくありません。
個人のQOLを維持していく目的で、麻酔科医と協力し疼痛コントロールをします。
この際に看護師は疼痛の部位や程度を詳細に観察し、医師に報告します。

・看護助手

主に日常生活援助や検査室・リハビリ室への患者移送などを行います。

・ソーシャルワーカー

病院と地域を繋ぐ窓口的な存在です。
入院中から退院後のことまで患者さんや家族からの相談を受けます。

 

消化器内科と他機関との連携とは?

病院には地域連携室という部門があり、地域や他機関との連携を担っています。

そのため看護師として病棟などで働いていると、直接地域と関わっているという実感が湧きません。

しかし入院期間の短縮化に伴い、急性期病院では入院時から次の行き先を検討するという傾向があり、病状説明の時には退院後を見据えた内容も盛り込まれます。

患者さんや家族は、病状によってはすぐに在宅療養が困難な場合もあるためとても不安に感じます。

看護師はそのような不安の軽減に努めるためにも、介護保険制度や社会福祉関連の施設などにも関心を持つ必要があります。

実際に看護の範囲を超える内容の時や、退院時期の目安がついた時には連携室へ相談しソーシャルワーカーに対応を依頼します。

消化器内科でも急性期的な治療が終了し病状が安定すれば退院することになります。

行き先としては在宅のほかに、まだ医療ケアが必要な場合には療養型病院、老人保健施設、ターミナル期では緩和病院やホスピスなどがあり、在宅でも医療ケアに関して自己管理が困難な場合に訪問診療や訪問看護が必要となります。

病棟看護師としては、患者さんの状態を分かりやすく伝えるための看護サマリーが直接的な外部との関わりと言えます。

病状については医師が書く診療情報があるので、看護師は日常の様子や看護上の問題点、必要な処置など、相手が知りたい情報を書かなければなりません。

地域での包括的なケアシステムの推進により、自宅に退院される患者さんの多くは近くの医院やクリニックを通院することになります。

このような地域の医院と大きな病院はコンピューターで情報を共有できるなど連携システムが進んでいます。

患者さんが今後の生活に戸惑うことのないように、急変時の対応などについて十分に説明しておくことも大切です。

退院以外でも他機関との連携が必要になることがあります。

病気の診断においてより専門的な検査が必要な時には、入院中に他機関の外来を受診することもあります。

大抵は患者さんと家族のみで看護師が付き添うことはありませんが、円滑な受診ができるように必要な物品の準備は事前に整えておきます。

今後もこのような連携医療はさらに進むと考えられ、看護師も自分の職場だけではなく周辺地域にも目を向けた取り組みが必要となります。

 

消化器内科の仕事上のやりがいと喪失感とは?

どの仕事にも言えることですが、やはりやりがいのあるなしで仕事へのモチベーションは大分違います。

消化器内科で一番のやりがいと言えば、一生懸命看護として関わった結果患者さんが元気に退院していく姿を見ることです。

そこまでの過程には患者さんの状態に合わせた看護ケアを行えた、生活指導をしたときに理解してもらえたなど、自分なりの目標を達成するための行動があったはずです。

そしてやり終えた満足感とともにそれが経験となって自分の成長の糧となるのです。

もしそのような目標もなく、業務として行っていたらそのような達成感を抱くこともなければ、成長にも繋がりません。

やりがいはそれぞれ人によっても当然違いがあります。

新人看護師の場合だったら、吸引や採血看護技術を早く身につけることにやりがいを見出すかもしれません。

また中堅看護師でしたら、チームリーダーとしてチームが上手く機能していくことに力を入れるでしょう。

このようなやりがいによって看護の喜びや看護師としてしての充実感を感じられる人は、多少の困難な仕事があっても乗り越えられます。

逆に一生懸命生活指導をしたにも関わらず、すぐに患者さんが再入院してきたり、治療の甲斐なく亡くなられた場合などには喪失感を感じます。

何度やっても採血が上手にならなかったり、チーム内でのコミュニケーションが上手くいかなかったりした時も同様です。

このような喪失感が続き、やりがいとのバランスが崩れると仕事が楽しく感じられなくなります。

喪失感は自分自身の目標設定を変えることでクリアできることがあります。

言いかえると気持ちの持ち方を切り変えるということです。

ですから自分の気持ちをコントロールできる人は、がっかりした気持ちや悲しい気持ちも経験として成長の糧にしていけるのです。

例え患者さんが亡くなられても、自分としては十分な看護ケアを行えたし、家族からも感謝の言葉を頂けたのなら達成感を持ってもよいのです。

やりがいもそうですが、人それぞれの一つひとつの経験はその人のキャリア形成にもなる大切な出来事です。

この経験の積み重ねが質の高い看護技術の習得に繋がります。

 

起こりうる急変・異変とは?

消化器内科では入院中に多い急変として吐血・下血があります。

吐血は口から血を吐き出すことですが、食道静脈瘤の破裂や胃癌・胃潰瘍による胃壁の損壊などが主な原因となります。

胃内容物と一緒に吐き出すことが多いため、大量の出血に思えて大変動揺する患者さんもいます。

看護師は冷静に嘔吐物を観察するとともに、不安を最小限にするような声掛けを行い、バイタルサインや身体状況を把握したうえで医師に報告します。

その時に嘔吐物や汚れた掛け物などは素早く目につかない所に片づける配慮は必要です。

下血は胃の中に溜まっていた血液が排出されたり、小腸や大腸の出血によって排出される場合があります。

出血部位によって色や性状が違うため、よく観察した上で素早く処理します。

吐血・下血とも出血量が多いとショック状態となるため、採血や補液・輸血など医師の指示に従って迅速に行動しなければなりません。

止血のために内視鏡下による止血術も必要となるため、一人ではとても対応しきれずパニックに陥ります。

そのため早い段階で他のスタッフに周知し協力を求めることが重要となります。

また消化器系の癌が進行し、終末期にある患者さんも少なくなく、いろいろな最後の場面に立ち会うことになります。

徐々に意識状態や血圧が低下している場合には、モニターを付けているのである程度の予測はできます。

しかし夕方まではいつもと変わりなかったのに、消灯後の巡視で意識が低下している状態を発見することもあります。

一般的には入院前に家族から急変時の対応について確認しているはずなのでそれに従います。

つまり急変時に救急蘇生をするか、しないかです。

しない場合は点滴や酸素以外に特に処置はせず、家族とともに最後の時間を過ごせるように配慮します。

救急蘇生を希望している場合にはただちに人手を確保し、蘇生を行います。

異変とは、普段は見られないような変化です。

肝臓癌や肝硬変の悪化では、最初は目の白い部分に黄染が見られたり、腹部が太ったと思ったら実は腹水が貯留していたなどの変化が現れます。

そうしたちょっとした変化を見逃さず、早期に異変に気づくことによって早期治療にも繋がるため、日頃の観察は大変重要です。

 

消化器内科の看護師からキャリアアップを目指して

消化器内科である程度の経験を積むことで、病態や看護に関する知識や一般的な看護スキルは得られます。

しかしそこから一歩進んだ知識を得たい時には、自ら進んで学びを深めていく学習意欲がなければ向上していくことはできません。

自分の経験をそのままにしないで、本などで確認したり調べたりするなどの振り返りが大切です。

病院によっては定期的に看護研究に取り組ませるなど、さらに知識を深められるような場を設けているところもあります。

自己学習だけではモチベーションが持続せず困難だという場合には、認定看護師や専門看護師といったより専門性の高い資格を積極的に取得させるところもあるようです。

認定看護師とは、特定の看護の分野において経験の上に蓄積された知識とスキルがあると承認された看護師のことで、その高度な看護ケアを実践しながら他の看護職への指導や相談をしていく立場にあります。
消化器内科に関連する分野としては、がん化学療法看護、がん性疼痛看護、緩和ケア、がん放射線療法看護があります。

決められた教育期間を修了した後に認定試験を受け、登録される仕組みです。

また専門看護師とは個人だけでなく家族や集団も対象となり、高度な看護知識やスキルを保健福祉医療に貢献させていくという目的があります。

こちらもがん看護など分野別の資格となっており、決められた単位を取得しなければなりません。

いずれも自分の進むべき道をしっかり見極めたうえで、目的を明確にして学ぶことが大切になります。

資格を取得した後も常に自己研鑚が必要ですし、自分を含めたチーム全体が質の高い看護実戦ができるような役割を担っています。

またそのような役割に見合った資格手当もあり、収入面アップも確実です。

実際に資格を取得するためには、6か月ほどの休職扱いになるところが多いようです。

その期間は無給となるためある程度の貯金が必要ですし、教育機関が遠い場合には別費用もかかります。

これらのことを踏まえて、自分に合ったキャリアアップについてじっくりと考えてみるのもよいでしょう。

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