人間にとって食べるという行為は大きな楽しみの一つでもあります。
しかし脳神経疾患によって摂食・嚥下機能に障害があると、その楽しみを奪われとてもつらい思いを味わうことになります。
そのため少しでも口から食べたいと訴える患者さんが多いのは当然です。
早期リハビリによって嚥下機能を回復させることも可能となってきているため、その人の機能的な評価をした後に嚥下訓練を開始していきます。
また運動機能の障害によって排泄行為を他人の介助に委ねなければならない患者さんも多くいます。
意識障害の有無に関わらず、誰にとっても羞恥心を伴う行為であり自分自身で行いたいという思いは強いはずです。
看護師は慣れからそのような普通の感覚を失いがちになり、患者さんの悲しい思いに気づかないばかりか自尊心をも傷つけてしまうことにもなりかねません。
患者さんの思いに添うためにも、できるだけ自立に導くような援助や羞恥心に配慮した方法を工夫しなければなりません。
一方で何もしたくないからほっといて欲しいという要望を言う患者さんも少なからずいます。
自分の障害に対する絶望感だったり、諦めの感情であったりしますが、まずはそういう思いがあるという事実を受け止めるしかありません。
無理にリハビリへの参加を促しても逆効果にもなるため、コミュニケーションを小まめにとるなどして良い関係性づくりが必要となります。
時間の経過とともに感情に変化が現れる可能性もありますし、薬の助けが必要になるときもあります。
どのような病気に罹ってもそう思うのでしょうが、特に脳神経の疾患で障害がある患者さんの場合は、自宅に復帰して今まで通りの生活を送りたいと強く望みます。
看護師は個々のその思いに添うためにも、できることを維持または増やしていく援助を考えていかなければなりません。
家庭環境についての情報をアセスメントし、在宅生活を踏まえたリハビリを行っていったり、活用できる社会資源についてもアドバイスをしていくことが求められます。
医療が主体となる病院では患者さんは受身となりやすく、要望を言いにくい環境にあると言えます。
そうした状況を理解し、誰でも要望を言えるような雰囲気作りや関係性の構築を考えていく必要があります。