老健は自立支援と在宅復帰を目指した中間施設としての役割がありますが、実際のところ在宅復帰率はかなり低く本来の機能を果たしていない現状があります。
国は医療費を抑えるために在宅介護・療養を推進していますが、一人暮らしや主介護者である配偶者・子供の高齢化による介護力不足を補うほどのサービスはまだまだ不十分です。
特に認知症への対策はなされていないに等しく、家族任せになっているために、結局施設入所に頼らざるを得ません。
急性期病院では治療を終えると早々に病院を退院させるために、医療依存度の高いまま老健に入所することになります。
病状が安定しているとは言え、何か異変があった場合には老健では治療ができないために、結局もとの医療機関での再治療が必要となり入院退所していくことも少なくありません。
在宅に戻れない場合は終の棲み家となる施設を探すことになりますが、値段の安い特養の人気が集中するため長い間の待機を強いられます。
特養への入所待機は全国で52万人にも上ると言われ、年単位で待つこともあります。
最近では有料老人ホームの数も増えてきてはいますが、やはり特養に比べて値段が少し高いことで拒まれる家族もいます。
このような理由により入所期間が確実に長期化しています。
高齢者が大半を占めている老健ではしばしば急変が起こりますが、90代や100歳近い利用者の搬送先を確保することはかなり難しくなります。
病院側としては超高齢者への蘇生に関しては疑問を持っており、施設での看取りを望んでいる部分もあります。
制度的にも老健での看取りを強化するためにターミナル加算を設けましたが、そもそも老健は在宅復帰を目的とした施設というのが根本にあるために、ほとんどの老健では看取るための設備もなければ職員教育も遅れています。
しかし現実問題として、老健での看取りの必要性は高まっていることから、今後の課題の一つとして早急に取り組まなければならないでしょう。
在宅で安心して暮らしていくためには、地域の医療体制をもっと充実させていくことが望まれます。
そのためには老健と病院の連携がもっと密にならなければなりませんし、老健でも可能な検査などの医療整備を増やしていくことも課題です。
昭和63年に誕生した老健ですが、社会から求められる期待や役割も少しずつ変化しています。
さらに充実したサービスを提供していくためには、時代に合わせたモデルチェンジも必要かと思われます。